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ハービー山口「Profile London」 1976
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第07話 『 品 格 』

 ここ数年、カメラ雑誌の月例フォトコンテストの審査を何誌かにわたり務めさせていただいています。応募数は雑誌によって異なり少なくて100点多くて 1000点近くなります。ベストを何点、何十点を選び選評を書くのは大変労力のいる仕事です。うかつなことで選んだり書いたり出来ません。大抵の作品に一生懸命がこもっています。少数派ですが選ばれない応募の仕方があります。サービス判の大きさで、24枚撮りのフィルムに同じ場面を少しづつ変えて撮って、 24枚送ってくるのです。「良いのがあるかも知れないから勝手に選んでくれ」というやり方です。「この一枚!!」という主張やこだわりが全くありません。選ばれる写真には主張やこだわりがあります。「見てくれ!!」と言わんばかりの声が聴こえるのです。良い写真は一瞬で良い写真だと判断出来ます。先の主張、こだわりが被写体の表情、光と影、構図、色をともなって見る者に迫ってきます。

その一枚は意外性、物語性、社会性、美しさ等をまとって厚み、深さが備わっています。こうした要素が写真力となって我々の心を刺激してくるのです。話はコンテストからはずれますが、恐らく写真が上手くなる方法は、沢山撮ること、そして良い作品を沢山見ることでしょう。その上で人によっては、他の人が今までやってこなかった手法や解釈の発見に努力するということもあるでしょう。新しい発見やものごとの解釈はそれだけである程度の作品の力と成り得ます。ここに一つ落とし穴もあります。新しいものにこだわるあまり、気を照らっただけで終わってしまうことです。新しい手法か、伝統的な手法か、アバンギャルドかオーソドックスか、これは入れもの、つまり器の問題でしかありません。大切なのは中身、つまりテーマです。自分のこだわりのテーマをこだわりの器に入れて社会へそっと差し出す。無理や空回りは禁物です。

 一つ提案ですが、撮影の基本は「撮りたいものを撮りたい様に撮る」ではありますが、テーマを見つけ、撮影から仕上げに際し、問われるのは作者の人格ではないでしょうか。人格を育てること、これは、沢山撮って、沢山見ることと同様、大切なことです。

「表現の自由ということで、なんでもあり」とは言うものの作品と作者の品格を問う見識を常に忘れてはならないと思います。