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第09話 『 時の流れ 』

 およそ7年振りにヨーロッパへ行きました。最後にロンドンに行ったのは1999年のことでした。何故かその頃から12時間飛行機に乗るのがすごく億劫に感じられ、国内線はまぁしょうがないとして、国際線は極力避けてきました。
かつて、パスポートのページがスタンプで一杯になり一冊分で足りなく、ページを増やしてもらっていた程頻繁に海外に行っていました。その反動なのか長時間の飛行機移動に拒絶反応が起きたのです。こんなこと決して想像出来ませんでした。従って今回の7年振りのヨーロッパは実に心機一転の旅でした。

 この旅、ロンドンの前にデンマークに数日立ち寄りましたが、空気や風景のきれいなこと。高層ビルしか無いからか、畑が遠々続き、雪を覆われていて、空が広くなんとも心洗われる環境でした。
夕刻になると雪原が夕陽でピンク色に染まるんですね。
春になると、この原っぱが一面菜の花の黄色に埋めつくされるそうです。店に入るとまず店員の客を迎える笑顔が印象に残りました。品物を買っても買わなくても、笑顔の対話がありました。そして店の中にほとんど音楽が流れていないことも新鮮でした。音の無い空間がとても心地良かったです。さてデンマークの後ロンドンです。

さっそく地下鉄に乗りました。駅が暗いんですね。かつて住んでいた頃は意識しませんでしたが、うす暗いプラットホームがどこか寂しげでした。そして、かつてそこら中にあったfish and chipsつまり魚のフライとフライドポテトの店が激減していました、fish and chipsはイギリス人のおやつで代表的な安いファーストフードですが、魚の値段が上がったのか街であまり見かけなくなりました。
その代わり本格的なレストランが増えたのでしょうか。やっとイギリス人の味の嗜好も国際水準に達してきたのかも知れません。数日レンタカーを借りて、ケンブリッジやオックスフォードに行きましたが、やはりイギリスの田舎は相変わらず美しいですね。車が走っていなかったら中世の街の様な錯覚にとらわれる村がいくつもありました。どこへ行っても街中は、同じ様な風景が続き、再開発の波で似た様な高いビルばかりの日本とは大きな違いです。
古いものを大切にする文化が人間に大きな安らぎを与えてくれるのだと実感しました。
フィルムはプレスト400とTMAX100を合わせて40本持って行きました。カメラはライカ2台です。

 10日間の旅でほぼフィルムは使い切ってしまいました。やはり旅に出るとフィルムの消費が急激に増えますね。撮りたい被写体にそれだけ巡り合うからでしょうか。撮りたいものに囲まれている生活、これが写真家の理想ですね。やはり一年に一度は海外へ行った方が良いと思いました。

 日本、外国、それぞれの良さ悪さを公平な目で知っている、というのはとても大切です。いい時間の過ごし方をすれば、時の流れは案外遅く感じるものです。