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第49話 『 感想文ノート 』

「今日は浜松から電車に乗って来ました。車中で山崎まさよしさんの曲を聴きながら、、。私にとってハービーさんの撮った写真と山崎さんの音楽はなくてはならない大切なものです。高校生の頃、初めて山崎さんの曲を聴いて"もう少し生きてみよう"と思い、ハービーさんの写真を観て、あの写真を撮った人のように、優しい穏やかな気持ちで人を愛したいと思えるようになりました。世の中は苦しいことや悲しいことの連続で、心が折れてしまいそうになることも沢山あるけれど、会場の写真を観てそんな悪い事ばかりじゃないと今感じています。」
「ハービーさんの写真を見ていると、その写真の中の空気がどんどん押し寄せてきて、まるでその場所にいるように思えてきてドキドキして、ちょっと涙が出てきます。なんだろう、不思議な感じ。恋みたいな感じなのかも。ドキドキして、引きこまれて、夢中になって胸が苦しいから涙がでちゃう。ホント大好きです。」

「未熟者ながら私も大学で写真を学んでいます。そうした中で人との関わり合いが苦手な私は、うまくコミュニケーションがとれず、いつも後悔や反省をし、自分を改めたいと思っていながら、出来ずにいました。でも、それじゃ、人生損するだけだとハービーさんの写真をみて強く感じました。『撮りたいものは全て撮れ、それがパンクだ』自分のふがいなさやくよくよした思いが、写真と言葉で吹っ飛んで行った気がします。また、ハービーさんの写真や言葉から被写体に対する深い感謝と愛情を強く感じました。それがものすごく大切なことであり、そういった姿勢が被写体の信頼につながり、素を見せてしまうのではないかな、と感じました。」

「今日初めて写真を拝見させて頂きました。ハービーさんのコメントを見て驚きました。体が弱かったということです。私は、高校2年生の時頭痛がひどくなり、学校へ行けなくなりました。そして3年の時高校を辞めました。今は何となく浪人生をしています。今日ここに来たのは、自分が嫌だからです。家から外へ出て、行く所もなく、なんとなく駅へ行ったらポスターを見つけて、すぐここに来ました。写真もロンドンも好きだからです。写真を見て、自然と笑顔になりました。ボードに書かれてあった言葉。『自分の持つ個性に誇りと自信を持ちなさい。それを磨くことが人生なんだ!』 ありがとうございます。救われました。」

「知人に券をもらって、何となく訪れた市民ミュージアム。ハービーさんの様に重い病気をかかえて14年間生きてきました。女の子が1人いて、その子の思春期に向き合う日々、、重い毎日、、 ハービーさんの写真を見て、私の憧れ、娘に伝えたいものがこの写真の中にあり、とても、心癒され、ほんの一時でしたが救われた思いです。今の私が求めているものがそこにある、そんな感じでした。たまらなく嬉しかったです。あなたは、どんな人、、いつかお会いしてみたい。お話してみたい。 命短いなんて病院の先生に言われちゃって、結構大変。この写真見て、生きる喜び、勇輝がわいてきた、なんてウソは言わないけど、とても嬉しい気持ちになりました。いつか、お会い出来る時があるといいなあ。」

「今日が2度目です。ギャラリリートークすごく楽しんで聞かせて頂きました。アフタートークで、ハービーさんは希望を撮るということについて色々話して下さいましたよね。HOPEを見つけるっていうのは、それ自体がもう闘いなんじゃないかと思います。目の前にいる人に声をかけて"写真撮らせて下さい"ということ自体、すごーい闘いで、ハービーさんはずっと自分でゴング鳴らして"勝負"に挑んでこられたんじゃないかなー。自分自身に目を転じれば、私は闘う覚悟がないから、そういう言葉を人にかけられないわけで。そんなことを今痛感しています。HOPEはちゃんと闘っている人だけが見出せるものなのですよ、きっと。」

「日々過ごしていく中で、たまにどうしても感じてしまう、自分の中の心のとげとげというか、かさつきというか、そんなものが、ハービーさんの写真を見るといつも、少しずつ消えていって、口角が気が付くと上がっています。ハービーさんのおかげで、私はどれだけ強く優しく日々を迎えられていることか!この場を借りまして、ステキな写真とメッセージ、本当にありがとうございます。大好きです。」
「昔、付き合っていた男の子がハービーさんの写真を大好きで、彼自信もハービーさんを目指して写真を撮っていました。私も写真を彼の影響で撮っていた時期があって、でも穴をのぞいたら、ハトが飛んでいるようなシャッターチャンスにはなかなか恵まれないです。いつも常に写真を撮り続けている人にしか与えられない瞬間なのでしょう。写し手は写真そのものには写らないけれど、見えないながら、写っていますよね。当たり前のことかも知れないけれど、やっと最近わかるようになってきました。」

「昨年から私の周りはとても目まぐるしい変化を続け、心に迷いが、、というか、色々な想いがあり、どうして生きていくべきなのか、1人思いを巡らせる日々でした。偶然手にした一枚のチケット。何か惹かれるものを感じました。時間つぶしに、、と参りました。"人が人を好きになれたらもっと優しい世界になる" 涙があふれてきました。写真一枚一枚に愛を感じ、とても幸せな時間を過ごせました。歩くべき道が見えてきた気がします。」

「まだ先が見えず、自殺を図り、救急車に運ばれ、ふと病院からの帰り道に久々に乗った電車の中刷りにハービーさんの宣伝がありました。ミュージアムは私の家から近く、宣伝の写真にただただ私は吸い込まれ、家を飛び出し、無の心でこのミュージアムに来ました。自殺なんてとんでもない!ハービーさんの写真に出会えて生きる優しさを知りました。もう一歩踏み出してみようと思います。」

「J−WAVEの放送を聴いて、やっと見に来ることができました。放送を聴き、心にひっかかるものがあったので、仕事の前に立ち寄りましたら、思っていた以上に心ときめく素敵な写真ばかりでした。たくさんの悲しみを知っている人が、たくさんの優しさを届けることができると証明してくれた感じです。私をこの写真展に導いてくれたJ−WAVE,また、ミュージアムの方々にも感謝です。」
「モノクロは時代を超えて語りますね。やはりいいなァと思いました。ハービーさんと被写体との程良い距離感が心地よかった。無理に領分を侵さず、相手との間にRESPECTというか、やさしい関係が成立しているから、写真の中の誰もが、穏やかにほほえましいのだなと思いました。それから空間の処理が上手いなと思いました。写真の間に添えられたコメントがなかなかよくて、何だかハービーさんとおしゃべりしながら写真を見ている気がしました。写真の中で特に大事件は起きていないけれど、それぞれが小さな物語を語っている気がした。"良い写真は簡単には撮れない。続けていくこと"というコメントには勇気づけられますネ。」

「初めまして!!私は都内の写真学校に通っているものです!ハービー・山口さんを知ったのは今年の4月でした。ハービー・山口さんの講義が私の通っている学校で行っていただいた時に、写真を初めて観ました。ハービーさんの写真を初めて観た時、人生で心の底から初めて写真を観て感動をおぼえました。と、同時に初めて写真を観て涙が出ました。言葉にまとめるのが苦手なのですが、ハービーさんの写真が大好きです。今、私は勝手にスランプを感じています。でも今日、ハービーさんの写真と言葉で元気が出てきて、スランプというのがなくなっていく気がしました。ありがとうございました。」

「新聞でこの写真展のことを知り、埼玉から足を運びました。私の中のハービー・山口は福山雅治を撮った人だったよなぁ、くらいのもので、音楽が大好きなので他にどんなミュージシャンを撮っているんだろうと、失礼ながらその程度の興味で見にきました。新聞に載っていた写真もロンドンのきらびやかな人物もので、こうゆう感じのものが多いのだろうと想像していたのですが、、、良い意味で全て裏切られました。なんて優しさにあふれているんだろうと。最初の街の人たちの写真たち。見ていて涙があふれそうになってしまって、なんてパワーなんだろうと思いました。それと、所々のエッセイのようなコメント。失礼ながらメモらせていただきました。ハービーさんはとても謙虚でいらっしゃるけど、いろいろな体験をしてきたからこそ、このような写真が撮れるんですね。私もこんな風に、年を重ねていきたいと思いました。素敵な写真と言葉をありがとう。」

以上の文章はいずれも、8月16日まで川崎市市民ミュージアムで開催した写真展に備え付けられた感想文ノートに書かれていたものの抜粋だ。「人の心をポジティブにする写真を撮りたい、そうすれば僕の様な落ちこぼれでも生きていける社会が出来るのではないか。人が人を好きになれたらもっと優しい社会が出来る筈だ。」そんな僕の思いを込めた2か月間の写真展だった。僕がギャラリーに居る限りは出来るだけ多くのの人々に話かけよう、そこからお互いの何かが変わるはずだ、ということばかりを考えていた。悲しいのは、僕は毎日会場に行けるわけではないので、僕が居ない時にご来場下さった方々とはお会い出来なかったことだ。ギャラリートーク、トークショーというイベントを何回も設けたが、依然お会い出来ない方々は沢山いらっしゃるのだ。そうした中、一人でも多くの人々と言葉を交わしたいという熱意はミュージアムのスタッフにも伝わり、ショップや受付けの女性スタッフは、僕が頼んだわけでもないのに、僕がギャラリーに滞在していると「あそこにいらっしゃる方がハービーさんですよ。」と入場者のお一人お一人に教えてくれていた。さらに2回目に訪れたお客さんが「前回はハービーさんが来ていることを教えて下さってありがとうございます。」と受付の女性にお礼を言った時、「15日にはトークショーがあるのでまたおいで下さい」と、お客さんを丁寧に誘ってくれたそうだ。女性スタッフのみならず、男性スタッフも同じ気持ちだった。市の管轄だから小回りは利かないのが建前であろうが、お客さんがいると5時の閉館時間を過ぎても、早く退場して下さい、と強引にせかすスタッフはいなかった。
そうした暖かい気遣いに支えられ、僕のいままでの人生最大の規模の写真展は無事開期を全うすることが出来たのだ。 僕自身は、写真を人生の中で常に一番大切なものとして扱い、コツコツと続けてきた結果がこうした写真展につながったという一面はあるだろう。しかし、この写真展を企画してくれた人々、ミュージアムで働く人々、そして万難を排し、入場料を支払ってまでいらして下さった方々が支えてくれて初めて成立したものなのだということを決して忘れてはならないのだ。この写真展でお会いした方々とまた会えるよう、そして会えなかった人たちと次回は会えるよう、また僕はコツコツと写真を撮り続けたいと、更なる思いを新たにするのである。