第1話 - 僕の写真
世の中には人の心を清く優しくしてくれるものが確かに存在している。
例えば、偶然出会った一冊の本、好きだった人と観た映画、故郷の風景、一輪の花…。 最近、「ほんのすこしの勇気から」という本に涙を流した。
先日僕は、いつもの様にバイクに乗って仕事に出掛けた。途中、バイク便が僕を追い越した。その追い越しざま、ライダーは左手を挙げ、僕にお礼を送って姿を消した。その小さな行為が嬉しくて僕はその日、良い仕事が出来た。
我々は日々、自分達の心を清く優しくしてくれるものを無意識のうちに探している。そして、幸運にもそれに出会った時、我々はひとときの生きている幸せを実感するのだ。
写真家にとって写真を撮る目的は様々だ。僕が写真を始めた中学2年の時、おぼろげながら、撮る目的は決まっていた。正に、人の心を清く優しくする写真を撮りたいと思っていた。あれから幾星霜、その気持ちは少しも変わっていない。
一枚の写真が人の心に清らかさと優しさを与えられたなら…。
そんなことを願って僕は日々一枚の写真を撮っている。