第08話 『 人間が人間を好きになる写真 』
3月中旬、日本写真協会の依頼で2000余点の作品を審査しました。審査員は僕の他に水中写真家の中村征夫さん。そして評論家の飯沢耕太郎さんでした。
最優秀賞、優秀賞、準優秀賞など30点程を選び出しました。
選び終わってつくづく思ったのですが、選ばれた95%以上が人間の写った写真だったのです。このことに注目しました。
応募作品の中には沢山の風景や花、動物、花火、都会の夜景等がありました。そうした写真はどこか目新しさがあると荒選びの段階で選考に残るのですが、選びがどんどん大づめになり、最終の30点を選び出す時には悲しいかな切られてしまいました。
そして生き残ったのが人間の姿を捕えた写真だったのです。
風景とか花、動物の写真は、一見美しく、可愛いのですが、それ以上の力が今回の作品の中には認められず表面の美しさ、可愛らしさだけしか写っていなかったのです。
そうした写真はすぐに見飽きてしまいます。そこで思うのですが、 やはり人間は身近にある最高の被写体だ、ということです。
人生が感じ取れる写真。人の心をポジティブにしてくれる様な人間が写った写真。日常の営みを綿々と撮った写真等にやはり審査員の心を動かす力が秘められているのです。
これはコンテストだけの話ではありません。日々、我々は何にレンズを 向けたら良いのか・・・。これは、最大の関心事です。
人の心をポジティブに、平和に、清らかにしてくれる。又は、社会とはこうあるべきでと示してくれる写真が必要なんだと思います。
それには人間の姿を撮るのが一番効果的ということです。しかし写真によほどの力があれば、たとえ人間が写っていなくても、人生を連想させる写真、人の心を豊かにしてくれる写真が人目をひきます。
人間が写っていても写っていなくても結果として人間が人間を好きになるような写真であれば良いのです。
人間が人間を好きになる。なんと素敵なことでしょうか。その一端でも写真家が担えたら写真家とは素晴らしいものだと思います。
さあ写真を撮りに出掛けましょう。。
人間の幸福を願って・・・。